夏の一冊読書。

ミステリ好きの数だけミステリを好きになるきっかけになった作品があって、その後、各々、違った道順を通ってミステリを読んでいる。既刊のミステリを読む順番のバリエーションは無限であり、それこそが個人特有の読書体験である(と、北村薫さんが言っていたような気がするし、言っていない気もする)。で、畢竟、何が言いたいかというと、その道順にはUターン禁止の道や、一方通行の道が存在するという事。どうやっても戻れない道があるのだ。それは経験が作り出すポイント・オブ・ノーリターン。一度、通ったらもう初心な頃の自分には戻れない。経験が読書を邪魔するのだ。経験値を積んでレベルアップするほどに、弱い敵との戦闘は味気なくなってしまう。
いや、↑の本が弱くて味気ない、という意味では決してない。今回は私の読書の順番がいけなかった。過去の作品は、アレンジを加えられて後世のミステリに使われる事をミステリ好きとして知っておかなければならなかったのだ。 とはいえ、今からエドガー・アラン・ポーまで遡るつもりもないので、時々、味気ない戦いを味わわなければならない宿命が、ミステリ読みにはある。戦ってみないと強いか弱いか分からないからだ。